ヨーロッパを訪れた人はこういう似たような場面をよく目にすることがあるだろう。最近は日本でもオープンカフェがあちこちの町に出来ているので「あっゴッホだ」と思う人も多いことでしょう。人工的なカフェの黄色い光と夜の青との明暗の関係が美しく配された作品。黄色で描かれた色そのものも美しいが、カフェの造形がまた美しい。画面中心まで張り出た斜めのカフェの壁のラインが暗い遠景のシルエット状の町並との対比でより強調されている。全体的には厳しい造形と言える。その厳しさを星とどこまでも広がっているかのように感じさせる夜空のブルーの表現に雰囲気のあるやわらかさを感じられる描き方でまとめている。ゆえにどことなく詩的な印象の作品となっている。見落しがちだが石畳の色がまた宝石をちりばめたがのようにきらめいている。深い寒色とやわらかさを感じる暖色との調和がこの作品の核となっている。明暗遠近法を巧みに扱いながらその個性と筆力の多様さで見る側の心の奥深くに強く残す。ゴッホのゴッホたるゆえんだろう。