Le déjeuner des canotiers
なんとも美しい作品です。もちろん描写も素晴らしいのですが、描き手の喜びが伝わってくる。これこそ絵画の本質と言えるでしょう。絵の中の人々の楽しい雰囲気の一場面をただ描いているのではない。構成がまず見事である。肘をついた中央の女性を中心に絵の中に蜜と間をいかにも自然な調子で融合させている。右手の人物の群像はいくつものグループでありながら大きく捉えるとひとつとなっている。画面左手の中景から遠景にかけての草原に空気感がありゆるやかに視線を遠くにいざなっている。タッチを活かした多様な画面の変化をかなり意識していることがよくわかる。普通、人物構成の場合、作者と主役の距離を短くし、主役を手前にあまり主張するモチーフを置いたりはしないのである。しかしこの作品では、手前のテーブルに数々の瓶やグラス、果物を並べている。このテーブルの上だけでも充分ひとつの作品になるだろう。静物が丁寧な描写でありながら中央の女性に見入ってしまうのは、女性が美しく描かれているだけではない。肘をついている柵が直線で女性に向かっている構成と、その茶色と白い洋服の明暗をよく利用している。右手前の男性の帽子の角度もとても考えてられている。まわりの人物は舞台美術のように考えつくされた集団と言える。ルノワールの絵画は散りばめられた宝石を全ての一つの箱にこれでもかと詰め込んだ印象を受ける。光と影、人物の視線、動き、形に、色のバランス、発色など、あげれば切がないのである。普通はまとめきれはしない。画家を目指す人は目標にしてはならないのがこのルノワールである。知れば知るほど自分の才能の無さを実感させられることだろう。それだけ偉大な作家である。作品である。ルノワールはちょっと触れるだけにしておいたほうがよい。