1月のある朝雨戸を開けたら庭木にジョウビタキの雄が飛んできた。カカッカカッと鳴く。羽を震わせてまた鳴く。ここのところ日課になっている庭の耕しを午前中から始めた。千萱や葦を取り除く作業だ。スコップで掘っては細かく取り除いていく。地面の中のことだから当然ミミズも出てくる。ミミズはまとめてる土の上にポイッと放る。そうしたら何処から飛来したのか、ジョウビタキがミミズを攫ってく。まさかと思ったけど、どうやら朝来ていたジョウビタキのようだ。ご賞味後、近くの枝にとまってこちらを見ている。カカッカカッと鳴いて羽を震わせる。作業は続けてるのでまたミミズが出てきた。庭石の上に置いてみる。さあーと飛んできてあっという間に食べてしまう。そして嬉しかったのか大きな声でヒーヒーと鳴く。ミミズだけでなく小さな幼虫もご賞味だ。こうして午前の部が終了、こちらもお昼だ。そして午後の部が始まったら、また近くの枝にとまって例の鳴き声だ。仕方なくミミズを探し出してはポイと放る。でもそんなに沢山ミミズは出てこない。作業をしていると近くの枝でずっと待っている。毛づくろいなどしてこちらの様子を見ている。庭を枝から枝へ楽しそうに行ったり来たりしている。ジョウビタキは冬の渡り鳥だ。朝鮮半島からやって来るらしい。連れ合いはいないようだ。こうしてジョウビタキに生餌をあげるのが日課になったのだ。毎朝雨戸を開けるとどこで見張ってるのか飛んで来る。カカッカカッおはよう、来たよと鳴く。私も舌でカカッカカッと音をたてて真似する。カカッカカッと返してくる。鳥と会話してる。あまり待たせてはいけないと朝食前に朝から穴掘りだ。ご近所には何をやってるのか、暇人だど思われてるだろう。朝は凍ってて冷たくてかなわない。そこそこ食べさせたら家に入る。日中は手の届きそうなところまで来る。すぐ後ろの枝にとまってる。嬉しいらしく羽を震わせ鳴く。誰にも知らせずこの楽しみを密かに続ける。途中どこかに散歩なのか少し来ない時間がある。心配になる。来るとやれやれご無事か。こうして春の気配がする頃まで毎日来た。一ヶ月以上。数日来ない日があったりしたがまたどこからか来る。そんな事が何回か繰り返された。春が来る。もうそろそろ帰ってしまうだろう。そう思うと切なく淋しい気持ちになる。すっかりなついた気でいる。でも季節は待ってはくれない。帰らなきゃいけない。そして日課を続けたがいつしか来なくなった。海を渡って行くのだろうか。毎年冬になるとジョウビタキがやってくる。カカッカカッと呼んてみる。あの子なら返してくれるだろう。そして側に来てくれるだろう。